ニュージーランド北島の国立公園内の山を横切るトンガリロクロッシング。
前回歩いたときに比べると、妙にコースがハードになっている気がしていた。
一応の頂上らしきところについて休憩した。
ここまでくればヤマ場は越した、という記憶があった。
ところが記憶はあくまで記憶。
ここからもアップ&ダウンがあった。
まずは地獄風な風景の中、まっすぐに伸びた道を歩く。
目の前にさらなる山(岩の)があり、「あーあ、また登りがあるんだ」という現実を突きつけられながら歩かなくてはならない。
歩いているうちに霧がかかり始めた。さらに地獄風の景色になる。
そこを抜けると、再び登り。今度は尾根っぽいところになる。風が強かったので、気を抜くと吹き飛ばされそうになる。
ビュンビュン吹いてくるし、標高もあるので、寒い。
我慢しながら一歩だし、また我慢しながら次の一歩を出す。
登るのはもういい加減にしてくれ、と思ったころで下りに入る。
すると、目の前がドーンと抜ける。
足元はズズッーと滑る。細かい石というか砂というか、この傾斜で、この足元かよ。という下りになる。
一歩踏み出すと自分の歩幅プラス、滑る分があるので、かなり進むことができる。
その一歩に勢いをつければ、さらに大きく進むことになる。
ただ、そのぶん、膝に負担がかかる。この負担が後々、大変なことになるのだが、少し進むと、緑色の湖が見えてくる。
それがきれいなので、膝のことを考えずに進んでしまった。
途中にはこんな道が何度も続く
そしてさらに進むみ、少しの坂を登り切ると、今度は青い湖が見えた。
あまりにきれいなので、ここで昼食をとることにした。
登り、下り、で言えば、ここれ辺で登りは終わりである。
あとは下るだけである。
そうなると気持ち的には「トンガリロクロッシングの半分以上は制覇したな」となる。
しかし、
ここからがこのコースの第二ステージである。
だらだらと、ひたすら下る。
下りのほうが膝に負担がかかる。
なんだろうか、下りに入った途端、膝が痛み始める。
というか、「あっ、そうだ、自分は膝が痛かったんだ」ということを思い出す。
そうなるとこの痛みは止まらないどころか、さらに大きくなる。
テチテチ歩き、それなりの時間が経つと、下のほうに山小屋が見えてくる。DOCの山小屋で、宿泊も可能である。すると、今度は「自分はトイレに行きたいんだ」ということも併せて思い出す。
そこから約30分。痛いのと、トイレに行きたいのとの、二重の苦しみを味わうことになる。
下りながら見る景色は向こうの方まで抜けていて確かにきれいである。
車でアクセスできるコースではないので、この景色は自分で登った者にしか味わえないものだ、というよく言われる感傷的なコメントで自分をごまかせるのも2分間ぐらいが限度である。痛みと尿意というフィジカルな訴えの方が遥かに直接的で、強い。
山小屋が見えてからの道はそれなりの傾斜があるために、いわゆるジグザグになっており、左右に大きく振られるコースである。直線的に行けば、そんなにたいした距離ではないが、あっちに行き、こっちに戻るを繰り返す。尿意的には「直線的に一気に駆け下りたい」しかし膝的には「このジグザグ傾斜でよかったあー」と葛藤が起こる。そんな山小屋までの道のりだった。
感覚的には近くに見える山小屋
景色は確かによい
トンガリロクロッシングの最後は山小屋からゴールまで。
山小屋には「トンガリロクロッシングのゴールまであと2時間(ハッキリ覚えていないが、たしか)」という表示があった。しかし、これはあくまで、「普通に歩いて」の時間の目安だった。
膝が痛くて痛くて仕方がない、という人間には、無理な時間である。
そしてここもまた長い。
歩いても歩いても先が見えない、というか後どれくらいで到着するのか見当がつかない。
抜けているので、下のほうに森が見える。
見えるのにぜんぜん近づいている感じがしない。その感覚がより、「遠い」感を演出する。
少し歩く。
痛みがプチ激痛になったところで止まって、自分でヒーリング。
再び歩き出す。
また少し歩く。
プチ激痛になる。自分でヒーリング。
この少し歩く、のスパンがだんだん短くなってくる。
そして少し長めの休憩を入れる。
足元を見ると靴がどーんとある。なんでこんな重たい靴を選んだろうか?と数日前の自分を恨めしく思う。
右足にはもう、この靴の重さを持ち上げる力も残っていない。
完全に引きずっている。
なんとか、周りの景色がガレ場風から、自分の背丈くらいの低木が生えそろうエリアまでは来た。少し前進した気がする。しかし、今度はなんとなく蒸し暑さを感じ始める。
今が夏だということを思い出す。
暑さを感じ始めると、今度は体全体の疲れも意識し始める。
「あっ、そろそろコースも終盤だ。ということは体もそれなりに疲れ始めているんだった。今まで痛いことばかりが頭にあったけど」
こうなると完全にダラダラになってくる。
なんというか、歩かなきゃ仕方がないので歩いていた。
やがて目に入る木が樹に変わってくる。
視界の抜けがなくなり、樹そしてシダが覆いかぶさってくる。
蒸し暑さはどんどん増す。
「あー、たしかホテルにサウナがあったよなー。戻ったら絶対に入ろう」とサウナを連想させる。
この状態で一度、頭に浮かんだ思考は数分リピートする。
サウナに入ろう。サウナに入ろう。サウナに入ろう。
歌が浮かんだ場合もなぜか同じフレーズがリピートする。このとき浮かんだのは「一休さん」のオープニングテーマだった。これは昔から良く出る歌だ。部活の練習中も頭の中でよくこれを歌っていた。
なので、突然目の前にあわられたゴールの瞬間も「一休さん」だった。
「着いたー」とは思ったが、感動よりも「一休さん」が離れなかった。
ゴール地点。ここでお迎えのバスを待つ
それなりに苦しいトンガリロクロッシングだった。
ただ、また行け、といわれたら、絶対に行くと思う。
それなりに楽しいコースでもある。
ニュージーランドに来るのであれば、ぜひ体験してほしいコースである。
ただ、準備はしっかり、体調は整えて。
本日もお読みいただきましてありがとうございます。
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